大阪国国民に告ぐ。プリンセストヨトミを圧倒的に鑑賞せよ。
見にいってまいりました「プリンセス・トヨトミ」。原作者の万城目学のファンなので、小説の方は出版されるなり読んでました。で、あまりのスケールのでかさにこいつを映像化するのはホネやろな、と思ってました。映画化の話を聞いても「そら無理やろ、鴨川ホルモーの二の舞になるんちゃうか」と。 映画版「鴨川ホルモー」の出来がいまひとつ納得いかなくて。あんな安っぽい映像で「大阪国」を描かれたらかなんなあ、と。しかし杞憂でありました。キャスティングはところどころ原作と全く逆だったり(原作では鳥居が男でゲンスブールが女)、色々違うところはあります。でも映画としては良くできていてね。原作の伝えたい部分はきちんと伝わっています。私には。 400年の時を超えて、豊臣家の生き残りがまだ大阪に生存しており、彼女を守るために二重国家である「大阪国」なるものが存在する、というめちゃくちゃな設定です。その荒唐無稽さを当たり前に感じさせるために、突飛な姿の主人公やら有りえへん職業に就いている大阪国総理大臣やら。超現実が列挙されると荒唐無稽もリアリズムになるんです。スラップスティックの原則。 今回は万城目学がお得意とする怪力乱神、鴨川ホルモーにおけるオニとか鹿男あおによしの鹿とか、しゅららぼーんの超能力者とかは出てまいりません。でもすごくけったいなんです。おもしろいんですね。映画の方では、綾瀬はるかが怪演ぶりを発揮。この人は目に表情が出てこないので、何を考えて演じているのかちっともわからん不思議な女優ですな。 舞台となった空堀商店街は、私が住んでいたわが愛する天神橋筋商店街よりさらに大阪ディープ度が高い、コテコテの街であります。歩いているおばちゃんが着てるヒョウ柄の洋服も、天満よりコントラストがはっきりしてますし、売ってるたこ焼きのソースもこってりどろりとしています。肉料理の名店「モナミ」ではこの世のものとも思えん巨大なハンバーグが出てまいります。 映画の最後の方で、大阪中の男たちが一堂に集結して大阪の全機能が停止するシーン。これだけのエキストラを集めて撮影されたんだとか。すごいね~。芸術は賑やかじゃないとねえ。やっぱり映画はカネとテマがきちんとかかっていると違います。だからまちがいなく入場料のモトはとれる快作です。とくに大阪国の国民は国民的義務として見とかんとあかんね。