贅六、興奮す。

胸騒ぎがするのである。
大雪と聞くと、太平洋側出身で普段は雪など一晩で消えてしまうような温暖の地からやって来たこともあって、当地の皆様には申し訳ないのだけど、火事場見物のような気分で積雪を期待してしまう。お許しくださいとしか言いようがない。

             

これは今朝起きぬけのベランダからの風景である。ここまでの積雪なら年末にも体験済みなので別に驚くには価しない。ただ、今日は休日だという条件が付加されている。

大雪の本場を見に行こうと思ったのである。とりあえず山のほう行けば、メートル級の雪が見られるんじゃないかとあさはかにも判断したのだった。ネットで調べると富山地方鉄道の立山線は通常運行しているではないか。ちょいとした強風で一時間も遅れる元国営企業とはえらい違いではないか。民間企業の底力やいかに。




これが雪に包まれた立山駅。13時17分定時に出発した地鉄富山駅発立山行き普通列車は、1メートルを越そうかという積雪の中、何ともなげに定時に到着したのである。乗車したモハ10030系はかつて京阪電車で特急車両として使われていた。貫通部にテレビを設置して「京阪テレビカー」とよばれていた名物車両のセカンドライフである。

富山地鉄は、モハ14760系なる鉄道部門の日本レコード大賞にあたるローレル賞をもらった、山岳鉄道ならではの優良車両も自主開発しているが、他社車両の再生も巧みとされる。西武鉄道で一世を風靡した5000系特急車両、通称「レッドアロー」も宇奈月温泉や立山行きの特急や普通列車として元気に第二の人生を送っている。




ちなみに、西武がレッドアローを地鉄に売り渡すに当たっては結構なイジワルがあったようで、近江商人の利益至上主義なのか、あまりいい話とは思えない。

余談はよしとして、雪自体が珍しい贅六にとって本日の雪景はまことに見事なものであった。





立山駅に到着したら、年中無休と称している蕎麦屋に出向き、風景をアペタイザーにしてそれこそ銘酒立山を傾けつつ、おろし蕎麦で一杯と念じていたわけながら。いざ、駅についてみると周辺の飲食店はもとより駅の食堂売店待合室まですべてクローズになっていたのである。やむなく、次の列車が出発するまでの数十分を散策と写真撮影に当てざるを得なかった。


                             


出発前に撮った立山駅構内からの写真である。この環境で定時運行をしていることの凄みを感じざるを得ない。しかも道程、雪でたわんだ木の枝が直接に窓ガラスを叩いたり、窓外の斜面を見る限り、ここであの雪がなだれを起こしたら絶体絶命やなと思わせるスリルといい、都市部で鉄ちゃんとでも言われる方々はぜひ長旅を遠しとせずにお越しいただきたいものである。




あまりに絶景に次ぐ絶景だったので、興奮して寝付けずこうやって深夜にブログを更新しているのだけれど、明日は仕事始めである。日本経済はもとより各界業績不振の中、いかなる策を巡らすべきなのか。もう一杯グラスを傾けつつ考えたい。

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