行天春彦と飯田与喜 三浦しをんにおける人物造形と禁酒禁煙と麻婆豆腐と。

三浦しをんのベストセラー「まほろ駅前多田便利軒」に出てくる副主人公?の行天春彦がおもしろい。運動神経敏捷にして、腕力抜群。冷酷にして非情。だからってヒーローでは決してなく、高校時代の同級生、多田啓介が営む便利屋に転がり込んで、働くわけでもなくかなり迷惑な存在として居候を決め込んでいる。

律儀で善人な多田啓介は、行天が居食するようになってから、街のヤクザやら売春婦やら今まで付き合わなかった連中ともかかわりができてしまう。困惑しながらも、行天を追い出すこともできない。

孤独であることを運命付けられてしまったた淋しい魚が2尾、冷たい流れの中で、距離を置きながらも同じ方向を指して漂っているように。


だからといって寂しく悲しい小説ではなく、適度にスラップスティックでサスペンスでしかも根底にコメディが流れている。町中の悪を一身に集めたヤクザな男、星が、じつは19歳の青年であり、酒タバコをやらないばかりか常に心身の鍛錬を怠らず、料理の達人でさえあったりする。おまけに頭脳明哲で、弱いものには実はやさしかったり。

生活力のかけらもなく、ただ腕力と敏捷性と妙に洞察力のするどい頭の持ち主である行天との対比が、第2作の「まほろ駅前番外地」では物語のアヤを作っていく。行天のもつ、非合理性の中にひそむ妙に合理的な暴力原理はとても女性作家が描くものとも思えないけど。


行天春彦から、ダークマターのような影と生活力のなさを取り去って人間味を180度回転させてやると「神去なあなあ日常」「神去なあなあ夜話」に出てくる、飯田与喜になる。「敏捷」と「暴力」はなにか三浦しおんの人物造形になくてはならないものなのだろうか。


一人の作家にはまると、ずんずんと読み拡げていく性分なので当分は三浦しをんを追っかけることになるんだろうな。


ちょいとだけ生活雑記。ここんとこ夜に出撃すると帰宅が午前3時だの5時だのと過激だったので、昨日はまっすぐ帰宅して読書に励んでおりました。夕食は近所の中華「華」で麻婆豆腐定食880円なり。禁酒禁煙の日とする。11時半にはコテンと寝て、朝7時に目覚めてみれば見慣れたようで見慣れはしない銀世界。


絶景でありキレイなのは充分わかったからさ。この冬の雪はこれでさいごにしてほしいもんだなあ。

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