starlight in the city

星がきれいなので、夜の松川べりを歩く。市役所の南西角を左折して佐藤工業のモスクのようなビルを視野に入れながら川沿いに逍遥する。振り返ればオリオンの三連星が寒気を貫いて幾千光年の時をまたいで我が視野に届く。見上げれば、おおぐま座・こぐま座・白鳥座。48都道府県の県庁所在地で、しかもその繁華街に隣接した遊歩道で、これだけ冬の星座を目前にできる街がほかにあるんだろうか。

本当に「星がいっぱいだ」と思ったことが生涯に、二度。ひとたびは長崎沖の男女群島に磯釣りへと赴いたとき。持ち込んだランタン以外に何の明かりも無い孤島の岩礁にいて、ライフラインとなるザイルに体を支えてもらいながら不安定な身体で見上げた星のカーペット。
ふたたびは、ブータン王国へ行ったとき。ダショオ今岡の邸を辞して宿へと帰る道すがら、鼻をつままれてもわからない、生涯初めてであった真の暗黒をペンライトの光だけを頼りに、野生動物(夜になると獰猛なヤクなどが出没するので)におびえつつ当然未舗装の林道を歩いたとき。見上た空は、ヘイウッド・フロイド博士や、デイブ・ボーマン船長が、ヤペタスの眼を超えて覗くことができた銀河の乱舞のごときものであった。

そんな思いをしながら、静かな遊歩道を歩く。酔ってあてどもなく歩行するのは富山生まれの文筆家・堀田善衛の癖であったらしいが、こんなきれいな星空だったら僕だってあるく。

柵もない川べりの道はかすかに黄色い街灯が、何とか足元が見える程度に間隔をあけてぼんやりとともっている。照明がうるさすぎ、水際の転落防止柵が景観を台無しにしていることが多い日本の街で、この美意識は素敵である。この土地に来てよかったと実感するときだ。

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