クルマ社会のはみだしっ子 ①
富山市は徹底したクルマ社会である。職場の某君宅などゴミ出しさえもご令室がクルマで出動すると言う。だいたい200メートル以上は歩こうともしない市民が多く、人口42万でそこそこの都市のはずなのに道行く人影がまばらである。市内中心部は次々と商店が店を閉じ、かつての繁華街であった総曲輪(そうがわ)あたりの商店街すらシャッターで閉じられた店が目立つ。
一方で街道筋にはいわゆるロードサイド店がならんでいて壮観である。巨大ショッピングセンターもあって駐車場町の車で休日は渋滞をおこしている。市内最大のショッピングモール、ファボーレまでは市内中心部から10キロ近く離れている。市民はクルマを持っていることが前提なので、富山駅からの富山地方鉄道バスは、そんな巨大モールまで1時間に1本のバスしか走らせていない。
営業車でファボーレの前を走ると、バス停で呆然とたたずむ老人を見かけることがある。
さて富山は立山から流れてくる地下水がおっそろしく豊富で、水よし米よしおまけに眼前の富山湾はリ・タイ・サバ・白エビ・ヒラメと水産資源に恵まれ(富山湾は別名をケンミンの生簀という)、いわずもがな寿司がウマイのであるけれど、回転寿司が半端ないレベルで競争している。ただし、富山の街中には一軒もなく、街道筋まで5キロくらい遠征しなければならない。だからこれもクルマを連ねて出かけることになる。この回転寿司はどの店に入ってもたいしたもんである。休日など、テーブル席で昼間っから宴会している市民も多く見かけられる。そんなとき、一団の中でどうもノリが悪く
いささか仏頂面をしている人間が一人二人連座している。くじ引きか力関係ゆえに当日の運転担当になった不幸な市民である。まあ、他府県民からは想像もつかない当地回転寿司店の豊饒ぶりについてはまた改めてレポートしなければなるまい。
なにしろ街中のコンビにすら5台分以上の駐車場があることがアタリマエなんである。
で、これが問題なのだけど、僕はクルマの運転ができない。ゴルフ場のカートは、トーナメントの仕事をしていたこともあるので、まったく問題なく運転できるけれど、普通自動車免許はなんとなく機会を逸してしまい、取得していないんである。
まあ、成人後に住んだ場所が、京都市左京区・中央区、神戸市中央区、大阪市福島区・東淀川区・
北区といったラインアップだったので、まあクルマはあれば便利と言った程度だったし、維持費を考えればタクシーで十分で、その分浮いたカネが美食やら海外旅行に化けていたのだ。
ニッポンの自動車産業不振の原因若年層のクルマ離れがあるらしい。維持費駐車場代を考えると東京や大阪の中心部でクルマを持つのはかなりの所得がないと難しいものね。
まあそういうわけで都会生活が長かったから(単なるズボラの所為か)、まああのプラスティックカードを所持しなくても別に困らなかったんだな。とくに直近に住んでいた大阪市北区の天満界隈は何しろ総延長3キロ、日本最長の天神倍筋商店街が、シャッターでしまっている店など見つけることが困難なくらいに繁盛しているのである。県ならびに市の中心部空洞化に悩んでいるらしい富山県知事ならびに市長は、海外視察にうつつをぬかすヒマとカネがあるなら、サンダーバードに乗って大阪へ赴き、まずは天神橋商店街を端から端まで歩いてみることである。それも徒歩でね。背広姿なんてとんでもないからね。カジュアルな雑踏とはいかなるものかご理解いただけるだろう。
しかしながら現実に自分が居住しているのは越中富山市であって、ここで免許証がないということがいかなることか。
9月末に引っ越してきて、まず行なったことは歩いて2分の富山市役所に出頭し、住民登録ならびに印鑑証明の取得をすることであった。
住民登録は何の支障もなく完了した。
問題は印鑑登録である。
「印鑑証明をつくりたいんですが」
「運転免許証をお見せください」
「あのう・・免許持っていないんですけど」
「えっ?」
受付の女性が驚愕でのけぞったのである。白昼にばけものを見たがごとき表情だった。
あるべきところにあるべきものがない人間に見られてしまったのである。
「パスポートは?」
「先月期限が切れました」
「こまりましたねぇ。ご自身を証明する写真入のIDがないとこちらでは発行出来ないんです。
申請書をお渡ししますから、記名捺印の上、提出してください。その申請書をそちらのご住所にはっそうしますから、その中の本人照会確認書を後日お持ちください」
などというやりとりがあった末に、一週間後印鑑登録は完了した。大阪市では健康保険証で発行してくれたんだけどなぁ。
非〈免許所持〉人として、それいらいたった1カ月のうちにさらに得がたい体験を重ねることになったのだけど、ちょいと用事ができたのでまた、後で。
一方で街道筋にはいわゆるロードサイド店がならんでいて壮観である。巨大ショッピングセンターもあって駐車場町の車で休日は渋滞をおこしている。市内最大のショッピングモール、ファボーレまでは市内中心部から10キロ近く離れている。市民はクルマを持っていることが前提なので、富山駅からの富山地方鉄道バスは、そんな巨大モールまで1時間に1本のバスしか走らせていない。
営業車でファボーレの前を走ると、バス停で呆然とたたずむ老人を見かけることがある。
さて富山は立山から流れてくる地下水がおっそろしく豊富で、水よし米よしおまけに眼前の富山湾はリ・タイ・サバ・白エビ・ヒラメと水産資源に恵まれ(富山湾は別名をケンミンの生簀という)、いわずもがな寿司がウマイのであるけれど、回転寿司が半端ないレベルで競争している。ただし、富山の街中には一軒もなく、街道筋まで5キロくらい遠征しなければならない。だからこれもクルマを連ねて出かけることになる。この回転寿司はどの店に入ってもたいしたもんである。休日など、テーブル席で昼間っから宴会している市民も多く見かけられる。そんなとき、一団の中でどうもノリが悪く
いささか仏頂面をしている人間が一人二人連座している。くじ引きか力関係ゆえに当日の運転担当になった不幸な市民である。まあ、他府県民からは想像もつかない当地回転寿司店の豊饒ぶりについてはまた改めてレポートしなければなるまい。
なにしろ街中のコンビにすら5台分以上の駐車場があることがアタリマエなんである。
で、これが問題なのだけど、僕はクルマの運転ができない。ゴルフ場のカートは、トーナメントの仕事をしていたこともあるので、まったく問題なく運転できるけれど、普通自動車免許はなんとなく機会を逸してしまい、取得していないんである。
まあ、成人後に住んだ場所が、京都市左京区・中央区、神戸市中央区、大阪市福島区・東淀川区・
北区といったラインアップだったので、まあクルマはあれば便利と言った程度だったし、維持費を考えればタクシーで十分で、その分浮いたカネが美食やら海外旅行に化けていたのだ。
ニッポンの自動車産業不振の原因若年層のクルマ離れがあるらしい。維持費駐車場代を考えると東京や大阪の中心部でクルマを持つのはかなりの所得がないと難しいものね。
まあそういうわけで都会生活が長かったから(単なるズボラの所為か)、まああのプラスティックカードを所持しなくても別に困らなかったんだな。とくに直近に住んでいた大阪市北区の天満界隈は何しろ総延長3キロ、日本最長の天神倍筋商店街が、シャッターでしまっている店など見つけることが困難なくらいに繁盛しているのである。県ならびに市の中心部空洞化に悩んでいるらしい富山県知事ならびに市長は、海外視察にうつつをぬかすヒマとカネがあるなら、サンダーバードに乗って大阪へ赴き、まずは天神橋商店街を端から端まで歩いてみることである。それも徒歩でね。背広姿なんてとんでもないからね。カジュアルな雑踏とはいかなるものかご理解いただけるだろう。
しかしながら現実に自分が居住しているのは越中富山市であって、ここで免許証がないということがいかなることか。
9月末に引っ越してきて、まず行なったことは歩いて2分の富山市役所に出頭し、住民登録ならびに印鑑証明の取得をすることであった。
住民登録は何の支障もなく完了した。
問題は印鑑登録である。
「印鑑証明をつくりたいんですが」
「運転免許証をお見せください」
「あのう・・免許持っていないんですけど」
「えっ?」
受付の女性が驚愕でのけぞったのである。白昼にばけものを見たがごとき表情だった。
あるべきところにあるべきものがない人間に見られてしまったのである。
「パスポートは?」
「先月期限が切れました」
「こまりましたねぇ。ご自身を証明する写真入のIDがないとこちらでは発行出来ないんです。
申請書をお渡ししますから、記名捺印の上、提出してください。その申請書をそちらのご住所にはっそうしますから、その中の本人照会確認書を後日お持ちください」
などというやりとりがあった末に、一週間後印鑑登録は完了した。大阪市では健康保険証で発行してくれたんだけどなぁ。
非〈免許所持〉人として、それいらいたった1カ月のうちにさらに得がたい体験を重ねることになったのだけど、ちょいと用事ができたのでまた、後で。
杏花様、
返信削除いろいろ大変でしょうが頑張って下さい。