隠居だって作って楽しい「娼婦風スパゲティ」とは。
マリアだったか、アンナだったか。とにかく彼女は亭主持ちの娼婦で、旦那が仕事へ行っている間にナポリの街角に立ち、稼いでいた。旦那が帰宅する前に大急ぎで家に戻り、大急ぎで食卓をととのえた。作るものはスパゲティで、ニンニク、アンチョビ、ケイパーに黒オリーブと、イタリアの家庭ならどこでも常備されている食材と、これまたナポリ下町の家庭では1年ぶん仕込まれている裏ごしのトマトを使い、大特急で仕上げる。このスパゲティは「スパゲティ アラ プッタネスカ」すなわち「娼婦風スパゲティ」と呼ばれるようになり、ナポリにおいて味の定番となった。もとより名前の由来に定説はなく、私が加筆引用したのは「暮らしの手帖/ごちそうの手帖」に増井和子さんが寄せられたものです。
そこに細かいレシピも掲載されていて、「暮らしの手帖」だけあってとてもよくできているのだけど、隠居料理は手抜きと時短も大事な要件なので私なりに作り方は変えている。
トマトソース以外の材料はこれだけ。刻んだニンニクとアンチョビとブラックオリーブのスライスにケイパーを。ケイパーな塩漬けのほうがいいのだけど近所のスーパーに売っていないので酢漬けで代用する。
オリーブオイルに刻んだニンニクを加えて、とろ火で加熱する。香りが立ってきたら、アンチョビを2枚入れて、箸かフォークでほぐす。無塩のトマトジュース1パックとざっくり切り分けたトマトを入れて弱火~中火で煮詰めていく。煮ている間にトマトの皮がはがれてくるので
箸でつまんで捨ててやる。トマトの皮が入っていても食感が少し悪くなるだけだから、そこはお好みで。市販のトマトソースを使ったって何の問題もない。
タイミングを合わせてスパゲティをゆでる。わたしはマ・マーの1.6ミリ3分ゆであがりを愛用していて(時短と、片手鍋でゆでられるショートスタイルなので)ソースが6分がた煮詰まったところで麵をゆで始めて、3分後に上褐のようにフライパンへ移してフライパンをあおりながら麺とソースをからめ合わせて、ケイパーと黒オリーブを加えて完成となる。
塩気が足りなければ塩コショウで加減する。スパゲティをはじめとしたパスタ料理の悲しいところは、仕上がるなり急いで食べ始めて、一気に食べあげるほうが肉体的に快感となるところで、ゆっくり味わっているわけにはいかない。作っている自分がいうのもなんだけれど、隠居のお昼にはなかなかのものですよ。もはや娼婦と縁のあるような気力もないけれど。あと、「娼婦風」のいわれには、娼婦の部屋でお泊りしたご贔屓さんのために、身近な材料で、手早くかつ精の付くものを作ったという説もあり、ヒマにまかせて調べてみようと思う。ちなみに江戸時代の吉原でも太夫さんの手料理というのがあったので、そちらはできれば次回でご紹介してみたい。
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