越中立腹帖

越中いいとこ一度はおいで、出来ることなら住んでみりゃれと気に入っていたのだけれど。残念な出来事に遭遇してしまった。事実関係に多少の解釈と脚色をくわえて報告することにする。

私の自転車は、大阪南森町の中古自転車店で9800円にて購入したものである。3年前かな。酔っ払い運転をして転倒し、変速機がおじゃんになってしまった。その際の衝撃で買い物カゴが平行四辺形に変形している。

また、路上駐車していたのでオプションで取り付けたベルも何者かに剝ぎとられてしまった。なんとか。ライトは点灯するものの、ダイナモが安モノなのでえらい脚力を必要とするから、警官が立っているところでしか使わない。


文章とは関係ないけど、富山国際会議場

でも「走る・曲がる・止まる」の基本機能は問題がないので、見栄えは気にせずに愛用している。いっそ盗難されてしまえば粗大ごみ処理料がかからずに、新車に買い替えることができるのでいつも施錠はしていない。しかし盗られないんだなあ。

まあそんな「問題アリ」の愛車なんだけど、タイヤの空気圧だけはいつもパンパンに入れていた。路面の凹凸を確実に伝える、固い乗り心地が好きなんで。ただ富山に来てから周辺に自転車屋がなく、転入以来10ヶ月にわたってエアを入れることができなかった。そんな折に、行きつけの「えび寿司」近くに昔ながらの自転車屋を発見し、この日曜日にようやく訪問することができたのである。

人の良さそうな老人が店番をしていた。店内には整備された中古車も置いてあり、ああここで買い替えてもいいかなとおもいながら、老人にエアの注入についてたずねてみた。

「あのう、このコンプレッサーつこうてエアを入れてもええですか」と。
すると老人は、
「コンプレッサーはダメじゃ。あんたには使わせれんが。外においてある手動の空気入れを使われ。空気だけの用事で店のなかに入れんが。あんたの言うことは聞けん。ほら、表に出らんか」
というなり、私を店外に追い出してカーテンを閉めて引き戸まで閉じてしまったのである。口蹄疫の保菌者でももう少し丁寧に接客してもらえるんじゃないかと思った。犬猫以下の扱いである。

関係ないけど、戦後築城の富山城天守閣


大阪で自転車に乗って数十年。コンプレッサーの置いてある自転車店で使用を断られたことなど一度もない。むしろそれをきっかけに店の人間と会話が始まって、ついには新車購入へとつながったことが再三再四あった。北区で、東淀川区で、福島区で。

商売っ気がないにもほどがある。他県出身者に対する越中人のホンネが見えた。柔和な顔をしながら、じつは他府県人が県内に存在することを拒否しているのである。関係性を構築したくないのである。(ただし東京都民は除く。都民は越中人のあこがれの的だから尊敬されている。大阪伊丹には飛行機を飛ばさないくせに、羽田には日に6往復の全日空便が通っている。都民は時として県内で芸能人のごとくサインを求められることがあるという)

気を取り直して再び自転車を漕ぎだした。中央通り商店街に向かう途中、地元民に良い評判を聞いたことのある果物店「Y」を発見した。専門店ならまだイチゴがあるかもしれないと、店の前に自転車を止め、店内を物色した。価格的には大和百貨店の青果売り場をしのぐ値付けとなっている。店主が出てきたので、

「イチゴ、欲しいんやけど。ええのを見繕ってくれへんかなあ」
と頼んだところ、イチゴのショーケースを検分して
「これ、630円になります」
とひとパックを出してきた。矯めつ眇めつして品質を確認したいところだけど、専門家を信じて提示された物件を黙って購入した。

家に帰って驚いた。半分がたが痛んでいたのだ。とても食用に適する状態でなかった。

ハラがたっても空は美しい

これが他府県民に対する越中人の商売なんだなと、悲しい怒りが身体を貫いた。しょせん「旅の人」だから、とことん関わりを持ちたくないのだろうか。それとも私の粗野な大阪弁が無用の警戒を呼んでしまったのか。大阪人といえば、他所では漫才師とヤクザしかいないように思われてるもんなあ、どうやら。目付き剣呑な小生はまず漫才師じゃあないほうに取り違えられるのかも知れん。

この日の2件が、誤解と偶然がなせる事故であったことを信じたいし、そうであることを切に祈る次第である。

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