労働価値感と津村記久子。あの8月は墜落の夏。銀座で洗濯。築地は赤身。

オトコにとって永遠の謎がオンナという生き物である、と思う。生活の細かい襞ひとつとっても、感じ方や捉えかたが全く違う。同じ会社勤めにしても、オンナは「生活のため」に労働価値と授受する金銭をきちんと割り切っているような。ヤローは仕事そのものを合目的化して、「生きがい」などと勘違いしがちなのだけど。この本を上梓した頃、津村記久子はまだ会社勤めをしていて、そのあたり男女の労働価値観がにじみ出ていて面白い。
関西出身の作家が、大きな賞とかを受けると、東京に移住しがちなのだけど、彼女はしぶとく大阪にとどまっていて、「なんでみんな東京へ行かなあかんの?」と肌感で言っているあたりに、共感を覚えずにいられない。


8月といえば「終戦など戦争の夏」であるとともに、昭和60年8月12日に発生した「日航ジャンボ機墜落事故」の「墜落の夏」でもある。未だに事故原因が明確になっていない、この民間空港史上最大の事故を、「航空機関士」の視点から、墜落した日航123便が残している様々な物理学的痕跡をもとに検証した本である。
著者は「ミサイル説」「陰謀説」などの当事故にまつわる珍説のたぐいを科学的に否定した上で、実際に機内で、機内と地上で、どのようなやりとりが行われたかを、実際の機内乗務員の経験をもとにしてシュミレーションしている。ご自身の職務が今はほとんど撤廃された「航空機関士」であったことから、いささか物語の上の航空機関士がスーパーヒーローになってしまったのはご愛嬌とすべきだろう。


とはいえ、8月8日の東京出張にヒコーキで出かけるというのに、前夜に読むのがふさわしい小説ではありませんでしたね。747シリーズ以降のボーイング製旅客機に共通する、ある種の設計思想など、いささか考えることもあって、寝付けぬ夜となりました。もちろん私の乗った全日空機はなんの挙動不審もなく、台風5号が過ぎ去ったばかりの夏空を軽快に飛行いたしましたけど。


1泊二日で帰阪するはずのお仕事が、何やかやとありまして二泊三日へ。二晩連続で濃い夜となり、新橋銀座界隈で呑んだくれると、入社以来35年ばかり恒例となった銀座「はしご」の坦々麺が深夜のシメとして登場してしまいます。


ホテル東急ステイ銀座は、銀座というよりも築地の近くにあり、有名な「ナイルレストラン」の並びになる。築地に本社があった頃の仕事仲間でここの「ムルギランチ」を食べたことのない人間はまずないと言っていいだろう。
ありがたいことにホテルの部屋に全自動洗濯機があり、チェックインの時に洗剤も提供してくれたりするので、想定外の日程延長もなんとかなった。


せっかく築地に宿を取ったので、朝飯はホテルでなく築地市場へ。先日の火災でラーメンの「井上」とかモツ丼の「きつねや」が消失したのはとても残念。築地と豊洲の件は、どうにも健康的でない裏取引が感じられて、賛成反対両派ともキナ臭い印象がする。
しかし場外は完全に観光名所になってしまいましたね。添乗員が小旗を立てて団体を誘導するようになってしまうと、なんだかなあ。


まあ時代は移り変われども、良質なマグロがここに集まるのは同じなので、朝は鉄火丼と決めている。なんということのない赤身のほうが築地というものの実力を感じさせてくれる。ヘモグロビンのいい渋みがたまりません。これに比べれば大トロとかってお子ちゃまの味覚ですよねえ。


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