越中ないない噺

安野モヨコの著作名じゃないけれど、「くいいじ」張ってるほうです。まいにち、あれも喰いたいこれも喰いたいと迷っている。新規開拓と称して、行ったことのない店に飛び込んでランチをしたためたりするも、期待外れに終わってしまうこと、あるでしょう。そんなときは、意に沿わないものを平らげることなく、とっとと店を出てしまう。そして、安心できる店でキツネうどん一杯でいいから喰い直すんですね。あと何年生きられるかわからないのに、つまらんもので胃をふさぎたくないのである。

面白いです。


越中富山に移転してはや11カ月が経過した。生活習慣の違いなど、ずいぶんと理解したつもりでも、いまだに驚くことがたまにある。とくに、食生活においては、あきらかに京阪神エリアと食文化が異なるので、「あってあたりまえ」のものがその片鱗すら存在せず、「みたことがない」ものが食卓や店のショーケースに並んでいたりする。

                   


富山の蒲鉾は板を使わない。だから居酒屋へ行っても「板ワサ」なるメニューは存在せず、単に「かまぼこ」と記載されているだけである。一本2000円の高級品も、大阪屋スーパーで99円でセールされている普及品もすべて真空パックになっている。なかでも昆布巻き蒲鉾はたぶん富山独特のものながら、もっと全国に販路が広がってもいい良品である。低カロリー高蛋白の蒲鉾に食物繊維の権化みたいな昆布なんで、美容と健康を気にする向きにもおすすめしたい。県内最大手の蒲鉾屋社長がアマチュア無線つながりなんでちょっとPR。                                



今度は富山にないもの。夏が旬の「キハダマグロ」が知る限りどこにもない。冬場の本マグロが上物は概ね築地に水揚げされるように、夏のキハダは那智勝浦漁港など関西に集荷される。ご覧のようにいわゆる「トロ」がまったくない、純粋の赤身で、食味もはなはだアッサリとしている。

どういうわけか、刺身というものにまったく食欲を感じない偏食者なんだけれど、夏のキハダはたまに食べたくなる。日本海側でも漁獲されているんだし、大和百貨店あたりで仕入れてくれないものかなあ。     
                 

               


それから、やはり夏の食べ物で言うと、「ハモ」が見受けられない。たまに和食店で梅肉をそえた「おとし」がでてくることはある。しかし、フライ・付け焼き・鱧寿司がないのはもちろん、夏のスタミナ食である「ハモ鍋」がないねんなあ。どこの料理屋のwebサイトを見てもメニューにない。 

関西ならどこの魚屋あるいはスーパーに行っても、骨切りされた鱧の身が売られており、自宅で梅肉、辛子酢味噌などで「湯引き」をいただくことができる。はたまた、淡路島名物の玉ねぎとともに鍋仕立てにしたものは、真に暑夏にふさわしく、あっさりとしながら滋養溢れる逸品である。それら、今までは普通に「夏のご馳走」にしていたものが、日本列島ひとまたぎ、越中に来てしまえば雲散霧消してしまっているのである。 


ハモ鍋の材料は、玉葱に豆腐、ハモ。あとは精々三つ葉があればよしとする。料理旅館などへ行くと、ここへ冬野菜の白菜とか、大根とか、余分なものが入ってきて味が濁ってしまう。ただし松茸だけは例外で、走りのものがあれば、ホンの数切れ香りづけに入れると滅法界の美味となる。

出汁はハモの骨・アラを焼いて、昆布出汁に加えてひと煮立ち。薄口醤油・酒・味醂少々で調味するのだが、鰹出汁でもまあ構わない。いささか野趣に欠けるけれどね。                          
  

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