鮎と蕎麦

お盆期間中は毎日富山競輪場へ(仕事で)日参していた。帰省もせず、行楽もせず。それじゃあまるで伊集院静のごとき、ギャンブラーの生活みたいだったので、ちょいと近所に出掛けることにした。JR北陸本線でざっと20分、富山県第二の街、高岡市まで。

                  

目的は川魚料理屋の「川瀬」。高岡の駅からクルマで5分。県内を流れる清流「庄川」の天然鮎を提供する店である。帰省ラッシュのさなか、久しぶりに顔を合わせたらしい親戚連れや同級生の集いらしき団体で、店内は満杯状態。メニューも少なければ、店員のサービスも実質本位でごくあっさりとしたものだけれど、まあいいのだ。焼きたての鮎の塩焼きを次から次へと平らげて、その合間に名酒立山と地酒三笑楽で舌を洗うことができるのなら。



北陸では天然鮎と言うと「庄川」となるらしい。岐阜県の山岳地帯を源として、白川郷・砺波市と流れわたり、新湊で日本海にそそぎこむ。太平洋側の鮎と異なって、せいぜい手のひらサイズまでしか成長しないのだとか。「川瀬」では、鯉の洗い、鯉コク、岩魚のから揚げなどとセットにしたメニューもあったけれど、ひたすら塩焼きを貪ることにした。


とはいうものの先付けはセットになっていて、煮付けである。いささか味が濃いので、ビールが合った。鮎とキリンと。名優二人の競演なり。なにしろ昼間は競輪場で厳しい直射日光にさらされていたので、ジョッキ2杯がたちどころに干されてしまう。




塩焼きのお姿。大きいもので6インチくらい。日本のゴルフ場の悪習、6インチプレースほどの長さかな。小さいものは4インチ・ざっと12センチほどか。当然アタマからバリバリと食べる。骨を噛み砕くブキブキ感と、しっとりほっくりとした身、香ばしく焦げた皮の取り合わせがたまりません。




鮎はこの特製別注の炉で、炭火で焼き上げられる。養殖物が一尾350円。天然物は600円。まあこの際値段のことは考えずにガンガン焼きあがるはしから、かじり付くことにした。といっても咀嚼で顎が疲れるので、まあ10尾くらいが限界でした。日本酒が2合。別注した大根の漬物(たぶん麹漬)が、鉈で割ったような大根を豪快に漬け込んだような野趣あふれる味わい。電車の時間さえ気にならなければ、こいつを肴にあと2本くらい呑みたかった。




翌日(というか昨日)の昼食は千石町の「まるぜん」で。3.5人前の特盛り蕎麦に特大の海老天2本を2人がかりで。別に何のこだわりも謳い文句も御託もなく、淡々と提供される蕎麦なんだけど、のどごしが上塩梅なので、頻繁に訪れている。

「鮎と蕎麦喰ふてわが老い養わむ」

獅子文六晩年の句である。かの大グルマンディーズも加齢には勝てなかったと見える。鯛の刺身やビフテキを食って、若い婦女子を追いかける気なんか毛頭ありませんと書き添えていた。私などにはかなり肯綮にあたる句なので引用した。ただし、文六先生には、この句を詠むまでにあんた幾度結婚してんのよと突っ込みたくもなるが。自爆に通じかねないのでやめておく。奇特な人士は、彼のバイオグラフィを検索されたい。

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