越中釣魚録

8年ぶりに釣に行った。とある筋から(まあ呑み屋の女将みたいなもんである)お誘いを受けて、富山湾に出漁することとなった。最後に出掛けた釣行は8年前の長崎県男女群島である。それ以来ロッド(竿)にもライン(糸)にも触れたことすらない。

金曜日、中之島の釣具店に(仕事中だと言うのに)でかけて、初心者用のリール、胴付きサビキ仕掛け、浮子(うき)釣り用の簡易セット、舟用のデッキシューズ、帽子などを購入した。ざっと7千円ばかり。ちなみに私が言う舟用のデッキシューズとは、鳶職人などがはく、地下足袋と靴のアイノコみたいなもんで、一足500円ほど。軽くて、滑らないことが特色。



サビキとは、一本のハリスに6つの釣針がついている仕掛けで、コマセ(撒き餌)のカゴを仕掛けの上か下につけることが多い。針自体にビニールの擬餌があらかじめつけられており、釣果を期待しなければ餌なしで釣ることも可能である。コマセをつかうと海底が汚れるから私は使わない主義と標榜している。ホンネは手にニオイがつくのが嫌なだけなんだけど。

何しろラインの結び方も忘れていたので、金曜の19時から21時まで「おわら風の盆」に出掛ける前に、メシも喰わずに仕掛け作りに没頭した。悪戦苦闘の末、なんとか3セットの仕掛けを作り終えることができた。それ以上に根掛かりしたり(つまり地球を釣ってしまうこと)、オマツリしたり(他人の糸と絡み合うこと)して、仕掛けをなくしてしまったら、その時点でジ・エンドとなる。まあそうなったら、デッキに寝転んで蒼空を眺め、海鳥の腹を見上げてビールでも飲んでおればいい。




「おわら風の盆」から帰宅したのは午前2時を回っていた。自宅出発は7時半。準備もあるから起床
を5時半とした。ほとんど寝てへん。ボヤっとした頭で船に乗り込んだ。出港。しばらくすると、完成近づく新湊大橋が見える。壮麗な建築物だが、そもさん、落成の暁に利用者がおるんかいな。それでもさすが保守王国の富山県で、事業仕分けの波を掻い潜って工事は進んでいる。




うお座の私は、舟に乗っていると機嫌がいい。波の加減も申し分なし。ついついあの唄を口ずさんでしまう。

朝だ夜明けだ 潮の息吹   
ぐんと 吸い込む あかがね色の
胸に若さの みなぎる 誇り 海の男の艦隊勤務 
月月火水木金金

赤い太陽に 流れる汗を
拭いて にっこり 大砲手入れ
太平洋の 波波波に 海の男の艦隊勤務
月月火水木金金

別に軍国主義者じゃないんだけど、舟に乗ってこれ以上勇壮な唄はないねえ。

              


新湊大橋が遠くなっていく。この日、気温は32℃ながら、なに遮るもののない海上でしかもぶ厚いライフベストを 装着していたので暑いのなんの。たちまち流汗淋漓となる。

最初は仕掛けが簡単な浮子仕掛けで始めてみたが、水深75メートルのところで、ハリス10メートルでは勝負にもならない。アタリもしないので、リスク覚悟でサビキを投入。




海越しに見ゆる立山連峰。空気が澄んで山が冠雪していれば絶景らしい。でも、11月の海には出たくないやね。半端なく寒いんだもの。昼を過ぎて少し波が出てきたかな。

たまにチョチョっとしたアタリがあるものの、魚影を拝むことなく時間だけは過ぎていく。トロロ昆布のお握りを頬張り、アイスボックスに詰めたキンキンに冷えたビールをのどに流し込む。普段はあまり嗜まないビールがどんどん空いていく。サカナが釣れなくたって極楽である。漁師じゃないんだもの。





富山港の近く、北陸電力富山火力発電所。今年は原発が2基とも機嫌よく稼働しているので、ここの罐に火が入ることはない。もっとも、東京大阪で猛暑のために電力需要が急騰して、電力不足を来したなら、原発の電力を売電して、ここも稼働させることになるらしい。

岸に接近したのは、深場ではホントに釣れなかったからである。水深15メートルの砂場でキスをねらう。ジェット天秤を用意してなかったので、オモリを重くしてサビキで砂地を引きまわすことにした。これでなんとかキス一尾をゲット。ボウズと一尾でも釣果があるのとでは大違いである。デジタルの世界では1と0の間にふか~い断絶が介在する。




一行の釣果である。私は左下のキス一尾だけ協力した。塩焼きで食ったけど、やっぱり釣りたてはちがうもんだねえ。道具も買ったことだし、ヒマな週末は岩瀬漁港まで自転車を漕いで行って、岸壁からの投げ釣りでもやってみようかな。


コメント

  1. 甘木であります。2010年9月12日 3:29

    翁は釣りをするのですね。
    実は小生も釣りはかなり好きなほうでございまして。。

    富山でゴルフか釣り。。

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