黒部峡谷トロッコ行

話はすこし遡るのだけれど、過日黒部峡谷へと出かけてきた。なんでも宇奈月温泉街でモーツァルト祭りをやるということで行ってみたのだけれど。イベントの主催者は「宇奈月は東洋のザルツブルグ」などと主張してはおりましたが。

 


富山地方鉄道、通称地鉄の宇奈月温泉駅。駅の東西に(ささやかに)広がる温泉街のそこかしこで、あの繊細な音楽家がものした旋律が流れている。黒部川をまたぐ橋の上で、街角のカフェや美術館の吹き抜けで。さらに観光案内所のホールにまでライブ会場が設置されていた。ほとんどが無料。地方文化を育んでいこうとする、地元の方たちの熱意に頭が下がる。



花より団子じゃないけれど。モーツァルトももちろん結構なんだが、ここまできたら名物トロッコ列車に乗って、天下の奇景を見物したいじゃないですか。可憐な少女が奏でるピアノソナタを背にして、いささか鉄道趣味のある私は、トロッコ列車の宇奈月温泉駅へと向かった。



これは後ろから見たトロッコ列車。大人三人が横並びに座れるほどの車幅である。結構な盛況だったので、往路は屋根付きのデラックス車両にしか乗れなかった。



この「手すり」がついていない素っ気ない吊り橋は、お猿さん専用に架けられている。タイミングによっては、駆け渡るニホンザルの一群が見受けられるそうな。と、車内アナウンスで室井滋が言っていた。富山県では、どこへ行っても室井滋と柴田理恵から逃れることが出来ない。ケンミンとなってはや一年(まもなく)、もうちょっと美人もいるんだけどねえ。





宇奈月ダムの放水風景。黒部川にかかるダム群に蓄積した土砂をここで吐き出している。流出した土砂は流れの速い川にのって、河口へと流れ込む。その量があまりに多いため、河口付近の生態系バランスに支障を来たしてしまい、漁獲高が激減しているらしい。まったく、お役人のやることといったら。




こんな渓谷が片道1時間半にわたって延々と繋がっている。10月半ばの紅葉のさかりには、いかほどの絶景となることやら。混雑を押して出かけてみたいものである。きちんと食料を確保して。なにしろ温泉街といい駅周辺といい、飲食店がホントに少ないので。



すれ違い列車。機関車によっては側面に「ローレル賞受賞」のマークが付けられており、この日立製の機関車はその道のファンにも評価が高いらしい。小柄なつくりながら200馬力を発揮して、13両のトロッコ客車を牽引する。




黒部峡谷鉄道は、単なる観光列車だけでなく、いまだに続く峡谷の開発やダム群のメンテナンスのための輸送業務もこなしている。というか、そっちのため敷設されたわけで、がんらい観光は後付けに過ぎない。このすれ違い列車は資材運搬車で、「峡谷美人1号~3号」を先頭にして重量近い無蓋貨車、ぐったりとした作業員を乗せた有蓋客車を引っ張っていた。「峡谷美人」は、その名に似合わぬ「ゴミ運搬車」で、風景の保持に努める経営姿勢をうかがわせる。






撮影はしなかったけれど、沿線で保線工事や駅のメンテナンスをする作業員の方々は、列車が通過すると全員が笑顔で手を振ってくれる。照れくさいので手を振り返すことはできなかったが、いい気持ちのものである。観光地に再訪したくなる気分って、風景だけじゃないんですね。

帰途はオープンの普通車に乗った。これからの季節、風に吹かれるための準備さえ万端であればぜひこのオープンカーに乗られることをお勧めする。展望・野趣ともに比較にならない。

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