雲外蒼天

今宵はこれほどと致しとうございます。ご主人様。明日のお仕事に差し支えますからと、おんなが言うので手を止めることにした。かくもはげしく連夜責め苛んでは確かに身体が保つまい。

いやあ、悪いおんなに引っかかってしまった。やんわりした上方言葉にのせられて、昨夜に続いての深夜に至らんとする交情となるところだった。澪(みお)は下り眉のやさしい貌ににあわぬ激しい「しん」が身体を貫いている女だから、こころと身体をいっしんにして接してやらないと、その「あじ」が伝わってこないのである。

偶然に大阪から連れ帰ってきて、二晩二夜ええ年こいて、その繰り出す手業の妙に翻弄されてしまった。




高田郁「みをつくし料理帖・八朔の雪」。きのう、新大阪駅でシリーズ4冊のうち2冊を購入した。米原経由で富山へ帰る道すがら、時間つぶしに読んでやろうの魂胆で。米原までの40分はちょっと読書するには慌しく、名古屋発富山行き「しらさぎ」の車中で、ビールと幕の内弁当が終わり、福井をすぎたあたりでようやく手に取った。




なにわ生まれのおんな料理人「澪」が、数奇な運命のもと江戸へと渡り、さまざまな人と出会いと別れを重ねながら、住み慣れない街で人を幸せにする料理」を追い求めていく。

当初は上方風の薄味が受け入れられずに苦労するが、やがてその甲斐あって・・みたいな。そこへ、旧友との邂逅あり、ほのかな忍ぶ恋あり。せっかく開いた店も、火災人災と事件の連続。澪をめぐる環境は、つねに北陸の冬の空のごとく厳しく、めったに晴れ間が出ない。




NHKの朝ドラみたいに「耐える女・成長する女」の物語なんやけど、そこは作者高田郁のストーリーテラーとしの並々ならぬ力量があり、ひとたび手に取るや、一瀉千里。全4巻(目下の所)を一気に読ませでおかないわけなんで。昨日も、いったん零時前に寝所に引き取ったものを、続きどうしても気になってしまい、深夜起き出して2冊目も読了してしまった。




本日。仕事の合間に、大和百貨店7階の紀伊国屋書店に立ち寄って、残り2冊を購入したことはもちろんのこと。暮れ四つ(午後7時)頃に帰宅し、赤巻き蒲鉾の付け焼き、オクラのおろし和え、白菜と牛肉の煮付け、の簡単3品でささっと晩酌を済ませて、その後一気に第3巻を読破した。

そうなんやねえ、レベルは隔絶しているけどこちらも日常に包丁を持ち、せっせと自炊するほうなんで、料理の描写とか、上手いんだよな。「オンナと物の味が書けたら作家も一人前」と言われるけれど、女が料理を書いているんだもんな。適わないですよ。

いやはや、本当に滅法界に面白い。やめられまへん。明日は大事なロングラン打ち合わせがあるので、心を残しつつハイボールでも呑んでそろそろ休むことにする。澪、主は今宵さすがにお見限りじゃ。そなたもはよう寝む(やすむ)が良い。なんて。

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