無理や。

今日、ハイチ支援の陸上自衛隊向け航空貨物が成田を出発した。人道支援の規模だとか軍隊である自衛隊の派遣がどうのこうのだとか、そんな問題はひとまず措く。私が大いなる関心を持ったのはその輸送にあてられた機材である。


世界最大の航空機、アントノフAn225。全幅88,5m 全長84mで最大離陸重量は600トンと伝えられている。ちなみに、日本航空が経営破綻の結果として退役を決めたジャンボジェットの最終シリーズ400型が最大離陸重量394トンで、ざっと1,5倍の重量となる。積荷は平常で250トン、詰め込めば300トンもいけるのではないかと言われる。

旧ソビエトのアントノフ設計局は、主としてプロペラ推進の巨人機製造では定評があったけれど、しばらく斯界の事情から疎くなっているうちにエライものを実用化していたものである。

もともとこいつは、ソビエト製スペースシャトル「ブラン」を背中に乗っけて運ぶために作られた、特殊用途専用機で、国家の解体と宇宙開発計画の見直しというか中断のあおりを受け、ウクライナの倉庫で眠っていたはずだった。

ロシア人も軍用機を民間転用してカネを稼ぐことを思いついたのだろう。大規模かつ遠距離かつ至急のお引越しや貨物運搬に役立っているようである。おまけにお得意先はかつての仮想敵国である、アメリカやら日本では自衛隊であったりするのだから、世の中とはわからない。長生きはして見るものである。


ダイナミックな飛翔の姿である。ピンと伸びきったアスペクト比の高い主翼と、六基もの大型エンジンを搭載しながらバランスの悪くならない巧みな設計に、私などは美しさを感じてしまう。
この巨人機は名前を「ムーリヤ」と呼ぶ。ロシア語で「夢」らしい。それも眠っているいるときに見るほうではなく、「人類の夢」などと使われるほうである。まあ、当然のツッコミだけれど本日はtwitterやら2ちゃんねるやらに「ムーリヤ?そら無理や」などと載せられていた。アクセントとしては「ムリーヤ」のほうが正解とする説もあるけれど、関西人の私としては「ムーリヤ」のほうがどこかとぼけた可愛げがあって好ましい。

図体がでかくて、自重が350トンもあるヘビー級のくせにとり回しは軽快であると言う。見た目にある種の美しさがある飛行機は、空力的にも無理がなく飛行性能が優秀であると、たしか故佐貫亦男先生が書かれていた。ただ、もともと背中に荷物を乗っけて運ぶ、越中富山の薬売りみたいな仕様であったから胴体後部にローディングランプ式の貨物搭載口がない。荷物の出し入れは機首をエイと持ち上げて順序良く運び入れなければならない。

力持ちで、動きも敏捷なのに肝心な所でいささか不器用な大男。映画に出てくる典型的ロシア人みたいで面白いではありませんか。

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