三象(さんしょう)を制覇せん

古来より、いくさの要諦は三象の把握である。天象・地象・人象。

まずは天象、つまりお天気から。諸葛孔明は気象予測の妙によってかの赤壁の賦を制した。夕刻より風向きが変わることを読み、敢えて風下側から攻めることで曹操を惑わせて、風の変わり目に火攻めにかかった。


諸葛亮孔明

兵力・物量で圧倒する曹操軍を、寡兵の劉備孫権連合軍が完膚無きにまでやっつけたのだから読むほうは爽快である。巨人軍に対する阪神タイガースみたいなもんやね。

日本では日露戦役において、「天気晴朗なれど波高かるべし」と電文を送った秋山真之。喫水が高めに設計されているロシア側の軍艦が、高波にあおられてより船腹をさらすことで、標的としての面積が増えることを考え、遭遇戦にあっては思い切った接近戦を演じて歴史上に残る戦果を挙げた。「舷舷相摩す」とはよく言ったもの。


気象に続いては地象。漢の武帝といえども、万里の長城をなんなく越えて河北より漠北より来襲する匈奴は最大の難敵で。衛青・霍去病の出現までは。衛青は戦いの場となる草原の地理を徹底的に調べ上げ、敵の埋伏から軍を守った。草原といえど起伏があり、丘の陰に数千の匈奴兵がひそんで、突然に軍の中核に襲いかかってくるため、算を乱して潰走した例が多かったのですね。


中国のテレビドラマ「史記」より


最後は人象。これは人事計画。昨日の「坂の上の雲」で山本権兵衛がやっていました。対露海戦にあたり、常備艦隊を臨時編成の連合艦隊にするにあたって、司令長官に東郷平八郎を抜擢したくだり。常備艦隊司令長官の日高中将が順当なところ、舞鶴鎮守府で隠遁のような生活を送っていた東郷を指名し、日高の猛烈な抗議にあう。

とかく現場判断で暴走しがちな猪突猛進型の日高より、大本営の指示を固守する忠実さのある東郷を評価したように、ドラマでは描かれていた。中央の命令に忠実でないと、国際間紛争では進退を違えるもとになる、ということなんでしょうね。


三笠艦上の図。祖父の家にもあったなあ。


なるほど。たった一度だけ、原理原則を守る英断で日本海海戦を勝ち取った帝国海軍は、その後現場の暴走で敗れていくわけなのね。真珠湾での攻撃不徹底、ミッドウエェーでの判断ミス、ミンダナオでの謎の反転と。

もっとも、山本は明治天皇に東郷を推挙するにあたって「東郷は運のいい男ですから」とコメントしたという逸話もありますが。


さて、天気予報があてにならず、一日のうちに氷時雨と晴天が入れ替わる越中に住まってみると、気象の把握は肝要であります。けさも予報では終日雨模様なれど、気温上昇の気配もありこれは昼前から晴れるなと直感、朝6時より洗濯機を稼働させ、大籠一杯の洗濯物を二度にわたって洗いあげた。外は雨ながら、室外干しを敢行。



どうも携帯のカメラから画像を移すと写真が倒立してしまう。まあええか。ようするに天象の予測見事に的中して、お昼前から晴天が広がったってわけ。我もまた名将と肯綮ならんか。おかげで洗濯物は冬場の富山と思えぬほどふっくら干し上がった。日が暮れて寒くなる前に、こっそりオフィスを脱走し、干しものを取込んできたことは、ここだけのお話。




週末は能登有料道路を使って、志賀町まで(仕事で)遠征しておりました。この日は北陸の西半分が雪で、道路沿いにスタックしたクルマがそのままになっていたり、衝突事故の現場があったり。雪国のドライバーもさすがに初雪ではハンドル操作に問題があるようで。

お昼時になれば、衛青将軍よろしく地象に丹念な私は、たぶん町内随一の食堂の位置をはっきり把握しており迷いなく到達することができたんですね。ナビでも分からぬ道で、半年前に偶然行った飯屋を覚えているのは、名将の素質かはたまた並はずれた喰い意地のせいか。




タイガースの左腕エースみたいな名前です。私はカレーラーメンというのになぜか感動して注文してしまい大失敗。伸び加減の醤油ラーメンにレトルトカレーがかかってるだけやん。同輩のブリかま定食があまりに立派で旨そうで、忸怩たる思いをしてしまった。意地を張っても運が付いてこない人生なのかもしれない。


ところで、かつてネットの姓名判断で名前を分析したことがありまして。まあ知的レベルなどはええほうだったんですけど、人格点がゼロだったんですね。人象を扱うのは苦手であるらしいです。

蟹は甲羅に似せて穴を掘ると言う。私も越中に蟄居して、地味な毎日を送っているのが、名将候相に縁なき人生らしくっていいのかもしれない。偉人伝は読むだけにして。なんてね。

じつは三象を把握せよ、なる古言は全くの私の創作だったりして。ここまでお付き合いいただいた方にはお詫びを申し上げます。

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