寒中食養

能登の寒牡蠣は身は小さいけれど、よく締まっていて美味である。本日の富山など昼間の気温が摂氏1℃で、おおむね零下のきびしさであった。かような玄冬の夜はその海の果実を用いた滋養あふれる小鍋立てに限るのである。

吾人はまず出汁をとらねばならない。昆布と雑節で牡蠣の旨味に負けない強い出汁を作成する。それにかまけるざっと20分の時間で鍋の仕度をこなす。

海水ほどの塩分にした微温湯で牡蠣の身をやさしく洗って汚れを取り払う。長ねぎは3センチほどのブツ切りに。豆腐一丁も適宜切り分けておく。

出汁に赤だし用の味噌をかなり濃い目に溶く。みりんと薄口醤油で味加減をする。

あとはカセットコンロに土鍋を設置して、出汁をあたため、葱豆腐を煮込んでいくのである。おりおりに牡蠣を投入して、火の通りに気をつけながら引き上げて、七味でもふってやれば、これはもう絶対にトレビヤンである。

 


富山名物の昆布巻き蒲鉾をわさび醤油でビールの友とし、鍋が煮えたところで銘酒立山に切り替える。七尾湾の滋味は出汁と赤味噌に翻弄されながらも、素性を失うことなく旨味のアマルガムを結晶させる。立山の腰の強さが美味の複合に負けることなく一層に引き立てる。淡にして薄ならず、肥にして厚ならず。 

         


まあ本人がウマいウマいと賞玩しているのだから、客観評価はたれかゲストが来たときにでも下していただくことにしよう。しかし、材料さえあれば号砲一発から30分ほどで仕上がるので、吾人のごとき独居中年にはもってこいの滋味となったのである。

この冬の幾晩かをこうして、地場の営養で過ごすことができるならば。






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