ご隠居適齢期

江戸時代、平均寿命は37歳くらいであったとか。乳幼児の死亡率が半端じゃなかったんで、元服まで生存することができれば、おおむね60くらいまで生きていたらしい。まあ還暦が寿命だったわけだな。定年退職なんてない時代だけど、50歳までには家督を譲って隠居生活、ってのが中流クラスの市民にとってあらまほしき老後だったようですな。




ご隠居と言えば「剣客商売」の秋山小兵衛ですね。小粋で達者で。私もそういう老人になりたいけど、残念ながら剣の達人にあらず。太平の世ゆえに、すすんで刀剣を帯びることもございませんが、包丁などは朝に晩に扱っております。




多忙な年明けには珍しいことに、19時前には帰宅。足元が悪い(溶けかけのグジュ雪)ので買い物をして帰る気力はありまへん。備蓄食糧でごまかすことに。モヤシひと袋に白菜キャベツをきざんで、薄揚げと赤巻き蒲鉾をちらし、ザクとする。お肉は冷凍してあった豚バラ肉。あと、突き出しがわりに富山名物昆布巻き蒲鉾をスライスして。

粉末の鶏ガラスープを湯に溶かす。多少の調味をしたのちに、肉野菜を放り込んで食う、そんだけのお気楽な小鍋立てであります。中華のタンメンの、具だけ食べてる感じ。でもけっこうウマいのですよ。安価にして栄養豊富。しかも低カロリーだもん。

残った汁は野菜のダシがでているので、翌朝に雑炊とする。文字通り「ウマイ汁を吸って」おりまして冬の朝にはこたえられまへん。




お食事と晩酌の友は、「ナショジオTV」で。出し物は「地球外生命体の住める星」。とりあえず銀河系のなかで、生命が発生・進化できそうな星があるかどうか。あるとすればどんな環境でどんな生命体が存在し得るのか。水の惑星とか、ダイヤでできた星とか。2時間がすぐにたってしまう。

お片付けの後、iPadのアプリ「金沢将棋」でコンピューター相手に対局する。ガキの頃に父親とよくやったもんだけど、定石を知らないし、知ろうと努力もしないのでちっとも上達せず。ゴルフと一緒やな。このソフトでは腕前が100段階に分かれており、現在はレベル6で、2勝1敗のペースなり。

犠牲を問わず積極果敢に火の出るように攻め立てると、コンピューターが「そんな無茶あらへんやん」とばかりに困っているのが、面白くあり可愛くもある。




ほどよくお酒も回ってきたら、寝所にまわって読書タイム。漫画版「阿房列車」の第3巻がとどいたので、ゆっくりとページを繰る。新潮社やら福武書店やらが「若い人にも親しみやすく」なんて馬鹿をほざいて現代仮名遣いにしたことに立腹してる私ですが。この漫画版は、画に転嫁することで、当時の風情を描きだし、百閒の諧謔味をひきだして秀逸ですね。



こちらは旧仮名遣いの旺文社文庫版。熟読玩味いたしましたねえ。百閒文学は、書かれている中身やストーリーよりも、文章自体の諧調が大事なんで。見た眼はちょっと手ごわいけど、旧仮名で読んでこそ面白い。

だってそうでしょう。三つ星シェフのポール・ボキューズが作った「スズキのパイ包み焼」が、ちょっと食べづらいからって、ミキサーにかけて「ほれ、柔らかくて食べやすいだろう」って言われてもねえ。
この文学史上に残る愚挙に加担した中村武志の名前は、文化破壊者として文芸を愛するものすべてに、永久に怨念を持って記憶されるべきと思う。

小鍋立て喰ってテレビ見て、一杯やって将棋をさして。寝間で本読んで小言を並べるなんて、ほどなく51歳をむかえるだけありますな。肉体と精神はすでにご隠居の域に達しましたか。

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