早起き前奏曲

かつて南米のローカル空港で、いつまで待っても来ない飛行機にじれた日本の商社マンが毒づいたことがあるという。我が同砲は今も昔もせっかちである。
「この国のパイロットに分針付きの時計は要らない。長針だけで充分だ」
「ダンナ、これでも進歩したんですぜ。去年まではコクピットにカレンダーを貼っておりましたんで」
などという逸話があるのだけれど。

私も定刻を守るのがまったく苦手である。

恋人と待ち合わせて遅れた記憶はない。
ゴルフに遅れたことはここ二十年で数回しかない。

なのに出勤にはしょっちゅう遅滞をきたす。
出張に出る電車飛行機に乗り遅れたことも、両手両足の指ほどあるだろう。
仕事と思うと、たとえ早め起き出していても何かのトラブルが起きたりする。トラブルが無くてもどういうわけか雪隠に赴きたくなっ、て止められない衝動に行き足を阻まれたりする。

あすは6時半には起床して身支度を整え、7時48分の特急「はくたか」に座乗し越後湯沢で上越新幹線に乗り換えて首都に出仕しなければならぬ。ナアナアで遅刻が許されるケースではない。しかし緊張がますほどに、怪態なる支障がおきるのもまた我が性癖でもある。

一計を案じた。明日の集合地点は銀座5丁目界隈。昭和通りにもほど近い。到達予定時間が11時半で集合時間は12時半である。JRがコレクタブルにパンクチュアルに運行されればそこに1時間弱の空白が発生する。

今を去ること25年前に後輩から教えてもらった、坦々麺の専門店「支那麺・はしご」がその間近にある。陳皮の香りもふくよかな独特のラーメンはいつ食べても新鮮で期待を裏切らない。このジャンルでは都内随一の逸品であると信ずる。



仕事はともかくとして、昼食時は慢性的に行列必至の名店に12時前に参上できるチャンスであると自己暗示をかけてしまえば、常人ならざる食い意地の張ったパーソナリティゆえに、プラシーボ効果で予定起床時間前にきっと起き出すはずである。

先年、手術で2週間ばかり入院した際に、不眠症ゆえに処方していただいた睡眠薬が劇的に効果を発して、積年の睡眠不足を完全に解消した。あとで医師からホンマの睡眠薬は二日分だけで後の十日分は小麦粉だったと知らされた。余程に暗示にかかりやすい体質なのだろう。幾分か悔しいけれども。


ところで「はしご」の坦々麺はご飯との相性も抜群なのだが、知る人ぞ知る、テーブルに置かれている漬物が魔力なのである。

千切りにしたタクアンに紫蘇の実と糸状の昆布がはいっている、歯ざわりが玄妙な漬物である。なんとかして入手したいものだとネットで調べ職業別電話帳で調べ、生産元は判明しているのだけれども、業務用2キロパックが最小単位では独身暮らしの私には荷が重い。

この怪力乱神ほどに食欲を煽り立てる漬物の商品名だけをご披露しよう。
その名を「龍馬たくあん」というのである。四半世紀も前から。

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