春風一閃ののちに

今日の越中は「春の嵐」。昨秋の台風を思わせるような烈風が吹き荒れている。土地の人間に聞く所ではこれに雷鳴が重なればいよいよ春の訪れだそうである。

春と言えば山菜。ミズ(タニフタギ)、ワラビ、コゴミなど立山山系の雪解け水にめぐまれた富山は山菜の宝庫である。山にまで登らなくても乗願寺川をすこし遡れば、近畿圏では想像もつかない収穫があるらしい。この冬の降雪に備えて買ったトレッキングシューズを履いて、摘み草の楽しさに触れるのにもあと旬日かと思えば、今宵の外出を阻む風の音も行進曲のスタッカートのごとく聞こえはしまいか。

立山を望む雪解けの乗願寺川水系


君がため 春の野にでて 若菜摘む 我が衣手に 雪はふりつつ  (仁和帝)

さていざ乗願寺川にでかけたとして私が狙うのは、山菜マニアの好む上記の種々ではない。多良の芽も豊富と聞くけど、自宅で天ぷらを揚げると大層に面倒だから好物だけど敬遠する。私の標的はじつは大概のスーパーでも売っているこの植物なのである。




和名をオランダカラシ(和蘭陀芥子)という。フランス名Cressonつまりクレソンである。ステーキのつけあわせによく出てくるアレ。どういうわけかスーパーの店頭でみかけるとほんのすこし、枝分かれほどで250円くらいするのである。

中華料理の周富徳さんが本に書いていた「豚舌と人参と大根とクレソンのスープ」なる一品があり、かつて偶然にクレソンの大束が安売りされていたときに作ってみたことがある。店のメニューでなく、厨房の片隅で鍋にかけておく、まかないの品として紹介されていた。だから粉末でも顆粒でも本格的に取ったものでもいい、ガラスープに材料一式を放り込んでただ根気良く煮込んでいくだけの、時間だけが悠長にかかる手間いらずのしかもどうして中々の逸品であった。これは気前よくドサドサとクレソンを入れる経済的胆力が必要なのが随一の問題点なのである。

そのクレソンが乗願寺川沿いのあるポイントに、あきれるほどに密生していると聞いた。水ぬるむ日をまって出動し、本懐を遂げる所存である。

煮込み料理の必然としてある程度の量を仕込まなければならないし、けして見かけのよい一皿でもない。君がため、と言いながら果たして喜んでくれる君であってくれれば良いのだけれど。

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